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東京地方裁判所 昭和42年(行ウ)45号 判決 1968年7月13日

原告 浅見延之丞

被告 豊島税務署長

訴訟代理人 川村俊雄 外三名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事  実 <省略>

理由

一、原告の請求原因第一項の事実は当事者間に争いがないので、以下本件係争の特別地代について判断する。

二、<証拠省略>によれば、本件土地(但し当初は一〇〇坪)は訴外北川弥一郎外二名が、昭和二三、四年頃より木造建物を所有のために期間を昭和四四年までとする約定で原告から賃借していたところ、同訴外人等が土地区画整理により地上建物をとりこわさねばならなくなつたのを機会に、同地上に鉄筋コンクリート四階建の建物を建てることの承諾を求めてきたので、原告は、昭和三九年六月二七日、うち七〇坪につき改めて同人等と土地賃貸借契約(本件契約)を結び、右申出を承諾して賃貸借の目的を堅固な建物所有のためのものとし、期間も右契約の日から昭和九九年六月まで六〇ケ年と定め、賃料は従前坪当り月五〇円であつたのを一〇〇円(七〇坪で七、〇〇〇円)に改め、この賃料が不相当となつたときは増減できることとしたほか、更に、特別地代なる名義で昭和三九年八月より昭和四三年九月までの五〇ケ月間毎月八万円合計四〇〇万円の支払を受けることを約したことが認められ、右認定に反する証拠はない(右特別地代の約定があつたことは当事者間に争いがない)。

右事実によれば、本件特別地代なるものは本来の地代のほかに、これとは別に契約の翌々月から五〇ケ月という一定期間に限り、月八万円という高額な金員の支払義務を定めているが、特に右期間中に限り本件土地使用の利益が著しく高いためその使用の対価を高額にする必要があつたとか、その他特段の事情が存在したことを認めうる証拠は全く存在せず、他方、賃貸借契約の内容が前記のとおりその目的および期間において著しく賃借人に有利に改められていることよりすれば、本件特別地代は土地使用の対価としての本来の地代ではなく、むしろ本件契約によつて右北川弥一郎等に対し、新たに右のように変更された内容の借地権を設定したことに対する対価としての性質を有するものとみるのが相当である。

三、ところで原告は、右特別地代のうち係争年分の収入金額となるのは、原告が係争年内に現実に受領した五ケ月分四〇万円のみであると主張するが、法は、所得計算の基礎となる収入金額につき現実の収入金額ではなく、収入すべき権利の確定した金額によつているものと解すべきところ(旧所得税法第一〇条一項参照)、前認定の事実によれば、右特別地代は、本件契約により借地権設定の対価として取得することとなつた 四〇〇万円を単に分割弁済の方法によらしめたにすぎないものであり、これに右契約のとおりの借地関係が係争年内に実現されていること(この点は弁論の全趣旨によつて認める)を合わせ考えると、右特別地代は四〇〇万円全額が収入すべき金額として本件係争年内に確定したものというべきである。したがつて、本件処分が右四〇〇万円を原告の係争年分の収入金額としたことに誤りはない。なお、原告は、本件のような場合にはいわゆる権利確定主義を適用すべきでないと主張するけれども、単に弁済期未到来で現実の収入がないというだけで、これに対する課税を不合理であるとすることはできない。

四、次に、原告は本件特別地代が借地権設定の対価として全額係争年分の所得となるとしても、本件土地価額の一〇分の五を超えないから、旧所得税法九条一項八号および同法施行規則七条の九を適用して、これを譲渡所得とすることはできない旨主張する。たしかに<証拠省略>によると前記借地権設定の対価として支払を受ける本件特別地代の額が本件土地価額の一〇分の五を超えないことが認められるから、右法及び規則の規定によつてこれを譲渡所得とすることはできない。しかし、そうだとしても、以上認定の事実によれば、本件特別地代四〇〇万円は同法九条一項三号により本件係争年分の不動産所得として課税されることになり、その課税標準及び税額が譲渡所得とした場合のそれを下廻らぬことは明らかであるから、この点に関する本件処分の課税標準等の計算を過大であるということはできない。

五、以上本件更正処分の違法事由として原告の主張するところはいずれも失当であり、その他の点については原告においても争わないので結局本件更正処分は正当である。

よつて原告の請求を棄却することとし、訴訟費用につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 小木曾競 佐藤繁 藤井勲)

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